2022年12月15日悲愴のドラ
横浜に住む高校時代の同級生Yから電話がありました。Yは、若い頃から絵や彫刻を見るのが好きで、休日に土をこね、轆轤(ろくろ)を回すような趣味人なのですが・・・
「俺、初めて生のオーケストラを聴いたんだよ!」と、冒頭から弾む声。
なにやら、神奈川県民ホールの前をフラフラ歩いていたら、ちょうどコンサートが始まる時間に遭遇したとのこと。「もしかしたら、ここで中に入らなければ、生のオーケストラを聴くことなく人生を終えることになるかもしない」と心が騒いだのだそうです。
Yの初オーケストラは、小林研一郎さん指揮の日本フィル。メインはチャイコフスキーの悲愴。「オーケストラって、本当にまろやかな音がするものなんだねぇ」
コバケンさんで悲愴か・・・
長男が中学生の頃、コバケンさんと共演させていただく機会があり、前日の練習会場での稽古から立ち会っていました。その時のメインが悲愴でした。本番当日、場所をザ・シンフォニーホールに移してリハーサル。4楽章で「その出来事」は起きました。「違う!そのドラ、昨日のと別のドラでしょう!」指揮棒を止めたコバケンさんが、奏者に語りかけたのです。「はい、違います。こっちの方がいいドラなんで」
長い悲愴交響曲の中でただ一度だけ奏でられるドラ。それも小さく。しかしそれは、神が人の魂を天に連れて行く死の宣告。まさに魂を込めて叩く場面。 「昨日のドラの方が良かった。すぐに取りに行って!!」
楽団のトラックが、大至急練習場に向かったことは言うまでもありませんが、それはさておき、指揮者とはなんと厳格で繊細な耳を持っていることでしょうか。
この話を聞くとYは、「プロって凄いな。残りの人生、また行くよ」大げさな、まだドラは鳴らないだろう。こんな会話をして電話を切りました。
しかし、来年60歳。「プロって凄い」。こういう話をもっともっと増やして伝えていくことが、私の役割のように思えてきました。
「俺、初めて生のオーケストラを聴いたんだよ!」と、冒頭から弾む声。
なにやら、神奈川県民ホールの前をフラフラ歩いていたら、ちょうどコンサートが始まる時間に遭遇したとのこと。「もしかしたら、ここで中に入らなければ、生のオーケストラを聴くことなく人生を終えることになるかもしない」と心が騒いだのだそうです。
Yの初オーケストラは、小林研一郎さん指揮の日本フィル。メインはチャイコフスキーの悲愴。「オーケストラって、本当にまろやかな音がするものなんだねぇ」
コバケンさんで悲愴か・・・
長男が中学生の頃、コバケンさんと共演させていただく機会があり、前日の練習会場での稽古から立ち会っていました。その時のメインが悲愴でした。本番当日、場所をザ・シンフォニーホールに移してリハーサル。4楽章で「その出来事」は起きました。「違う!そのドラ、昨日のと別のドラでしょう!」指揮棒を止めたコバケンさんが、奏者に語りかけたのです。「はい、違います。こっちの方がいいドラなんで」
長い悲愴交響曲の中でただ一度だけ奏でられるドラ。それも小さく。しかしそれは、神が人の魂を天に連れて行く死の宣告。まさに魂を込めて叩く場面。 「昨日のドラの方が良かった。すぐに取りに行って!!」
楽団のトラックが、大至急練習場に向かったことは言うまでもありませんが、それはさておき、指揮者とはなんと厳格で繊細な耳を持っていることでしょうか。
この話を聞くとYは、「プロって凄いな。残りの人生、また行くよ」大げさな、まだドラは鳴らないだろう。こんな会話をして電話を切りました。
しかし、来年60歳。「プロって凄い」。こういう話をもっともっと増やして伝えていくことが、私の役割のように思えてきました。
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